研究参考書

[書評]生物系学生が読んでおきたい本!微生物に関する知識を学べる一冊!

こそあど
こそあど
研究を進めていく中で、腸内細菌に関する話題が多い!少し、腸内細菌に関わる書籍を読んでみようかな?

このように考えていた時に出会った書籍について紹介します。

本記事の内容

  • 著者の紹介
  • 内容説明
  • 学生視点で大事なところ
  • まとめ

大学院に通い、研究をしながらブログを書いています。

こそあど(@ksad510310)と申します。

数年前から、テレビやニュースで腸内細菌について放送されています。

最近の論文では脳内領域に関わる”脳腸相関”について取りざたされていて、腸内の研究も関わっている私にはとても興味のある内容でした。

そんな中、周囲からの評判も高かった「あなたの体は9割が細菌~微生物の生態系が崩れ始めた~」を手に取り、とても満足していたので紹介したいと思います。

読んでほしい人

  • 生物学を専攻している学生
  • 腸内細菌だけでなく、人類の細菌とのかかわりの歴史に興味がある人

 

著者の紹介

「あなたの体は9割が細菌~微生物の生態系が崩れ始めた~ 著者:アランナ・コリン 訳:矢野真千子」

本書では、生物学を専攻していた著者がマレーシアで、蝙蝠を調査していた際に体験した感染症をきっかけに話が始まる。

そんな著者アランナ・コリン氏はインペリアル・カレッジ・ロンドンで生物学の学士号と博士号を取得した後、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン及び動物学協会で進化生物学の博士号を取得している。

この著書は、博士号を取っている方が書いているだけのことがあり、非常に専門的で生物を専攻していないとわからない用語や原理があるので、理解するのに時間がかかる部分があつかもしれません。

しかし、全体を通して“ストーリーテリング”にて、読みやすい工夫をしています。

歴史の物語をたどりながら、現在の問題や過去の病気の事例の物語を挿入して書かれているので共感が湧きやすいと感じました。

その中で、私の気付きを書いていきます。

 

内容説明

著者は、マレーシアにて行った蝙蝠についてのフィールドワークにて感染症にかかりました。

その治療には、大量の抗生物質を必要としたため、治療が終わると体調に異変が生じたことから体に住みつく微生物に着目するようになったそうです。

そこで、著者はこのように考えたそうです。

私の健康被害は氷山の一角だった。共生微生物のアンバランスが胃腸疾患、アレルギー、自己免疫疾患、さらには肥満を引き起こしているという科学的証拠が出てきていることを私は知った。体の病気だけではない。不安症、うつ病、強迫性障害、自閉症といった心の病気にも微生物が影響している。私たちが人生の一部として甘受している病気の多くはどうやら、遺伝子の欠陥や体力低下だけでなく、ヒト細胞の延長にある微生物を軽んじたせいで出現した、新しい病態のようだ。

-p.12-13-

新しい知識が入ってきそうでワクワクしますね。

本書では、

  1. プロローグ
  2. 序章
  3. 21世紀の病気
  4. あらゆる病気は腸から始まる
  5. 心を操る微生物
  6. 利己的な微生物
  7. 微生物世界の果てしなき戦い
  8. あなたはあなたの微生物が食べたものでできている
  9. 産声を上げた時から
  10. 微生物生態系を修復する
  11. 終章
  12. エピローグ

の構成で書かれている、非常に内容の濃い一冊になっています。

現代の薬で治療できる健康的な生活がどのようにして出来上がったのかを歴史を紐解きながら説明していくところから始まります。

そして、現代において微生物が認知されるようになるまでの過程を順を追って説明していき、現代の問題となっている病気に関する新し仮説を検討していきます。

主には、過去の事例からの学びが多く、また生き物の生態系を例に説明することもあります。

その中で得た私の気づきをいくつか書いていこうと思います。

 

学生視点で大事なところ・気づき

学生である私が読んでいて大事だ、心惹かれた部分を少し紹介したいと思います。

 

大事なところ・気づき①

私が、心ひかれた最初のエピソードは第1章 21世紀の病気「健康向上に寄与した4つのイノベーション」における過去の話でした。

4つのイノベーションとは、

  1. 予防接種
  2. 衛生管理
  3. 公衆衛生対策
  4. 抗生物質

です。

この中で私が気になったのは、衛生管理についての話でした。

現在の病院と比較すると、当時の病院というものは病気で死にかけている人間ですし詰めになっていたそうです。

感染症の原因は微生物ではなく瘴気という「悪い空気」だと思われていた時代に、清潔にすることの重要性はほとんど知られていなかった。瘴気は腐敗物や汚水から立ち上る蒸気のようなものとされ、医者や看護師の努力で防げるものではないと考えられていたからだ。微生物の存在はそれより150年も前から知られていたが、病気との関係は疑われていなかった。感染経路は空気だと思われており、医療関係者は接触に無頓着だった。―感染症は治療のために患者に触れる医者や看護師によって拡散していたというのに。

-p. 42 2行目-

この文章だけで、当時の無知ゆえにどれだけの命が消えていったのかが想像できてしまいとても胸が苦しくなりました。

その後、特に女性の死亡が多かったことを理由に、産科医が疑問を抱き、原因を突き止め、消毒することを思いついた。

しかし、その産科医は当時下級医師であったため、人々に相手にされず馬鹿にされた。

ごわごわなって固まって悪臭を放つ医者の上衣は、それを着ている者の経験と技量を表すとされていた時代だ。毎月数十人の女性を死なせていた当代一流の産科医は、「医者は紳士であり、紳士の手は清らかである」と豪語していた。

-p. 44 2行目-

科学的な証明をしていても、信条や観念が大事にされる時代だったために、人々を助けることのできる思いつきも医者の面目のため排斥されてしまったという事実に、動揺してしまいました。

原因を突き止めた産科医は精神病になり、病院へ送られ感染症で死んでしまったそう。

後に、ルイ・パスツールが細菌説を打ち立てるまでその治療は続けられた。

現代のように消毒が広まり、治療が清潔に施され、病気にならない時代になった背景には、必死に人を救おうと伝えた人間がいたことを忘れてはいけないと思いました。

 

大事なところ・気づき②

第3章 心を操る微生物「遅発性自閉症のきっかけ」にて書かれている物語は、この本一冊を通して一番印象に残る話でした。

この話を友人にすると、テレビで特集されていたことがある気がすると言っていたので、もしかしたら聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

ーあらすじー

ある母親のお子さんが生後15か月検診で耳に感染症が見られたとして、抗生物質投与を行った。

しかし、耳の感染症は再発を繰り返し、様々な抗生物質を投与することとなった。

すると、お子さんの体調は変化し始め、耳の感染症は治ったものの、下痢やよろめき、性格の変化が起きてしまった。

その行動の変化から、医者を尋ねまわると「自閉症」との診断が下される。

母親は生まれた時には息子は正常だったと感じていたが、医者はそれを否定し一生治らないと説明した。

それでも、この母親はこの診断を信じず、自ら調査に乗り出す。

息子を観察し、公共図書館で文献を探し、論文を読み、別の診断をしてくれる医者を探し回った。

そして、興味を持ってくれる医者と出会い、新たな仮説を思いつくのだった…。

この話は、何度読んでも母親の努力の凄まじさを感じます。

一般人なら医者の行っていることを信じてしまい、悲しみに暮れる人生を送ってしまってもおかしくないところを諦めることなく別の医者を渡り歩き、調査をするところは尊敬に値します。

これほど必死になれるのは、やはり家族という関係性ゆえなのだと、少しこみ上げる思いがありました。

 

大事なところ・気づき③

第8章 微生物生態系を修復する「他人の便を分けてもらう」にて話題となっているいわゆるFMT(糞便移植)に関する話は、自身の研究にも少し関係してくるのでとても興味深かったです。

現代では、ヨーグルトや乳酸菌飲料などで微生物を大量に取り込み、腸内細菌を増やそうという商品が多く出ていると思います。プロバイオティクスというものです。

これは、腸内細菌が健康に重大に影響するからその知見を利用した販売をしています。

この章での話では、事故により抗生物質治療を行っている最中にクロストリジウム・ディシフィルと言われる細菌が腸内に入り込んでしまったときに治療についての話です。

その治療法の一つに、糞便移植という方法が存在します。

糞便移植なんて気持ちが悪いと考えるかもしれませんが、自身の生き死にがかかっている場面で躊躇できないのではないだろうか。

最近では、スポーツ選手の便を体内に移植するとその選手のように運動能力を高めてくれるなんて話もあります。

広まりつつある治療可能性を秘めているこの方法に関する知見が得られて良い話でした。

 

まとめ

体を構成している微生物について理解することは、自分自身の健康を保つうえでも必要となる学びだと考えています。

本書では、その学びがぎっしり詰まった専門的なことを知りたい学生や社会人にはとてもおすすめの本となっています。

ぜひ、より濃密な微生物の世界に足を踏み入れてみてはいかがですか?

大事なところ・気づき

  • 歴史の中で、衛生管理において発展させようと試みた人が、その時代の背景によって押しつぶされてしまうという事実があったこと
  • 抗生物質投与によって、幼児期には特に体内に大きく影響する可能性があること
  • 医者から診断されたからと言ってその一人の医者を信じるのではなく、様々な医者から診断を仰ぐ必要があること
  • 糞便移植は、現代で広まりつつあり今後どうなっていくのか非常に楽しみであること